「短時間で読める面白い小説が知りたい」「感動する短編小説を探している」
そんな声に応えるべく、2025年のおすすめ【短編小説】をジャンル別に厳選しました。
本記事では、「短編 小説」の魅力を最大限に味わえる名作から隠れた良書までを一挙に紹介。通勤時間や就寝前、ちょっとしたスキマ時間に最適な一冊がきっと見つかります。
「読みやすくて心に残る短編小説」を探している方は、ぜひご覧ください。
【感動&癒し】心があたたまる優しい短編集
心にそっと寄り添ってくれる、そんな一冊を探している方へ。
人間関係の温もり、日常の優しさ、再生の物語など。感動しすぎず、泣きすぎず、ちょうどいい読後感が心地よい「癒し系短編小説」を集めました。疲れた心をそっと癒すような、やさしい世界へ触れましょう。
人魚が逃げた(青山美智子著)
『木曜日にはココアを』の青山美智子さんによる、優しさに包まれた連作短編集。
登場人物たちがバトンのように主人公を引き継ぎながら、物語がゆるやかにつながっていきます。今回そのカギを握るのは「アンデルセンの人魚姫から飛び出してきた王子様」。どこか現実離れしているのに、なぜか違和感のない不思議な空気が広がります。青山作品の“優しく繋がる世界”が好きな方には、まさにぴったりの一冊。
読後にはきっと、心がふっと軽くなるはずです。
ハグとナガラ(原田マハ著)
「旅に行こう。人生をもっと、あがこう。」
落ち込んだ主人公に友人が送ったこの一文に、すべてが詰まっている——そんな短編集です。
人生の折り返し地点、40〜50代に差しかかり、かつて描いた未来とは少し違う今。思い通りにいかない日々を生きるなかで、それでも「これでいい」と思えるようになる6つの“旅”の物語が収録されています。
どの話も、心のなかに優しく灯りをともしてくれるような読後感。とくに、頑張りすぎてしまう人や、今の自分にちょっと自信が持てない人にぴったりな一冊です。大人になってからの“再スタート”を優しく後押ししてくれる短編集。
ギフト (原田マハ著)
芸術と優しさをつなぐ短編集。どの物語も、心にほんのり灯りがともるような1冊です。
原田マハさんといえば『楽園のカンバス』など、アートを軸にした長編でおなじみですが、本作『ギフト』は、より身近な日常と感情に寄り添う短編集。プロポーズや結婚をテーマにした作品も多く、どれも静かで優しい幸福感に満ちています。
特におすすめなのが『コスモス畑を横切って』。お台場の情景が丁寧に描かれ、読んでいるだけで秋の風と花の香りが漂ってくるような、心地よい1編です。(お台場にそんなのあったっけ?)
タイニー・タイニー・ハッピー(飛鳥井千砂著)
職業支援施設「タイニータイニーハッピー」を舞台に若者8人が、それぞれ主人公となる連作短編集。
恋愛に揺れたり、仕事に悩んだり、不安定な日々の中でも前を向こうとする姿が心に深く響きます。
一話ごとに異なる視点で描かれながらも、物語はゆるやかにつながり、読後には“ちいさな幸せ”が胸いっぱいに広がるような余韻が残ります。静かな感動が欲しいときにぴったりの短編小説を探している方には特におすすめ。恋愛真っ只中の人には、心の奥にじんわり届く一冊になるはずです。(全員がタイニー・タイニー・ハッピーです)
さがしもの(角田光代著)
本を愛するすべての人へ。「日本でもっとも美しい文章を書く作家の1人」と私が思っている角田光代さんによる、“本”をテーマにした短編集です。
古本屋で偶然出会った“かつて自分が売った本”と再会する話や、別れを前に共有の本棚を整理する同棲カップルの話など、本が人生にそっと寄り添う物語が9編収録されています。大きな事件はなく、語り口は淡々としていますが、それがかえって心に染みる。
一冊の本が持つ記憶、人と人とをつなぐ静かな力——本好きにはたまらない一冊です。
【ミステリー&どんでん返し】思わずゾクッとする短編集
一気読み必至!ミステリーの醍醐味が凝縮された短編集を厳選。
「予想外のラスト」「緻密な伏線」「背筋が凍るような展開」、そんな短編ミステリーの魅力を存分に味わえる作品を集めました。通勤時間にもぴったりな“読み切り”で、ゾクッとする体験をぜひどうぞ。
満願(米澤穂信)
不気味で不穏な短編集を読みたいなら、まずはこの1冊。
『インシテミル』『儚い羊たちの祝宴』で知られる米澤穂信が描く、読後にじんわりと冷たさが残る6編を収めたミステリー短編集。どの話にも共通するのは、明確な恐怖ではなく、“言葉にしづらい違和感”の積み重ね。
タイトルだけで不穏な空気を漂わせる『柘榴』をはじめ、『満願』『夜警』『死人宿』など、どれも静かに読者を追い詰めていく構成が見事。気づかぬうちにゾクリとくる、上質な短編ミステリーを読みたい方へ。
看守の流儀(城山真一著)
重厚だけど読みやすい“渋系どんでん返し短編集”
刑務官という“見えない現場”を描いた、渋くて重厚、でも不思議とスッと読める全5編の短編集。主人公は、刑務所という閉ざされた世界で働く看守たち。耳慣れない業界用語やリアルな描写が物語に深みを与えながら、それぞれの話は独立性を保ちつつ、うっすらとした連なりを感じさせます。
どの話にも読みごたえがあり、途中で胸を打たれ、涙し、そして最後には「まさか!」と声が出るほどの見事などんでん返し。静かで誠実な筆致と、物語の醍醐味が同居した、希少なミステリー短編集です。(めちゃくちゃ面白いです)
神の悪手(芦沢央著)
「このどんでん返しが切なすぎる」——帯のコピーに偽りなし。
将棋をモチーフにした短編ミステリー集ながら、知識がなくても問題なし。心にずしりと響く物語ばかりが詰まった、おすすめの短編集です。
「悪手(あくしゅ)」というキーワードが象徴するように、本作に収められた7編は、“勝負の裏にある後悔や葛藤”を描いた心理ドラマでもあります。少し怖さを感じる話、現代社会を鋭く突く話、そして「恩返し」に描かれる師弟の複雑な関係など、バラエティも豊富。特に「恩返し」は、名作です。
Y駅発深夜バス(青木知己著)
この一冊は本当に“当たり”しかない。
どんでん返し・読者への挑戦状・鉄道ミステリー・ホラーテイスト・笑える1編…と、1話ごとに驚きと余韻が詰まった、バラエティ豊かな全11編。青木知己さんの巧妙な仕掛けと絶妙な語り口が、読者を最後まで飽きさせません。
エグさや重さはほとんどなく、テンポも良いため、長編に疲れた読書スランプ中の人にもぴったり。「読書ってこんなに面白かったっけ?」を思い出させてくれる一冊です。
邪馬台国はどこですか(鯨統一郎著)
歴史にゆる〜く突っ込みを入れながらも、妙に納得してしまう不思議な短編集。
表題作『邪馬台国はどこですか』では、九州でも近畿でもない「ありえない場所」に邪馬台国があった!?という大胆仮説をBARで語り尽くすスタイルが展開されます。他にも『ブッダは悟っていなかった』『聖徳太子の正体』など、どこまで本気か分からない歴史トリビア(というかフィクション)が満載。
歴史に詳しくなくてもOK。雑談のタネや、ちょっとした会話のネタにも使える短編集です。
その復讐お預かりします(原田ひ香著)
静かな復讐劇が大好きな方には超おすすめ。
結婚を信じていた相手に裏切られ、会社でも孤立してしまった神戸美菜代。彼女が最後にすがったのは、高額だが評判の高い復讐代行『成海事務所』だった――。
本書は「サルに負けた女」から始まり、彼女の復讐が描かれる「神戸美菜代の復讐」まで、5つの短編で構成される連作小説。ハリウッド映画のようなド派手さはないものの、静かに、じわじわと効いてくる“リアルな復讐”。暗くなりすぎず、時間つぶしにもピッタリです。
【ファンタジー&SF】異世界と想像力に浸れる短編集
日常を忘れて、想像力の翼を広げたいときに。
ファンタジーやSFの短編小説は、短いながらも世界観の深さが魅力。
異世界、超能力、未来や宇宙……そんな“非日常”を気軽に味わえる、想像力くすぐる作品を集めました。
僕らだって扉くらい開けられる(行成薫著)
“使えない”超能力を持つ人たちが、誰かを救っていく——。
念じることで「数センチだけモノを右に動かせる」、怒ると「どこかに火をつけてしまう」、触ると「相手を金縛りにできる(ただし髪の毛が抜ける)」など、ほとんど役に立たない能力を抱えた主人公たち。彼らが短編ごとに悩み、迷いながらも、小さな“ヒーロー”として活躍していきます。
そして最終章では、彼ら全員が集結してひとつの事件に挑む“弱小アベンジャーズアッセンブル”!
不器用だけど、胸アツで優しい短編集です。
光の帝国(恩田陸著)
超能力を持つ“常野(とこの)一族”をめぐる、不思議で静かな11の物語。
透視、記憶操作、未来視など、能力を持ちながら、目立つことなく、歴史の影にひっそりと生きてきた常野一族。彼らが交わる日常の中で、淡く切ない感情や、因縁の連鎖、家族の秘密などが浮かび上がっていきます。
優しくて、でもどこか哀しい。そして、ただ“力がある”というだけでは済まされない運命が、読む者の心に残る——そんなおすすめの短編集です。続編を読めば世界はさらに広がります。
あなたの人生の物語(テッドチャン著)
ハリウッド映画『メッセージ』の原作を含む、知的で深いSF短編集。
言語・時間・記憶というテーマを見事に物語に落とし込んだ表題作『あなたの人生の物語』は、映画を観た人にも読んでほしい珠玉の短編。「もし異星人と出会ったとき、言語が通じなかったら?」というシンプルで根源的な問いを軸に、人間の認識の在り方まで掘り下げます。
他にも、バベルの塔をめぐる神話的な構造を大胆にSFにした『バビロンの塔』など、全8編それぞれが重厚で奥深く、一話ごとに世界の見え方が変わるような読書体験ができます。
少し難解な部分もありますが、SFや哲学、言語・認識・時間の概念に興味がある方には超おすすめの一冊です。
東京奇譚集(村上春樹著)
東京を舞台にした、どこか不思議で、少しだけ現実からずれた5つの短編小説を収めた短編集。
タイトルにもある「奇譚」とは、“珍しく不思議な物語”のこと。『偶然の旅人』『ハナレイ・ベイ』『どこであれそれが見つかりそうな場所で』『腎臓のかたちをした石』『品川猿』といった印象的なタイトルに惹かれる方にはぜひ読んでほしい1冊です。
テレビ番組『世にも奇妙な物語』が好きな方なら、きっと世界観に引き込まれるはず。怖さはなく、どこか静かで余韻の残る不思議な物語たちは、通勤中や就寝前の読書にもぴったり。
ボッコちゃん(星新一著)
これぞショートショートの金字塔!「短編小説って面白い」と思わせてくれる永遠の名作。
わずか2〜3ページで完結する超短編=“ショートショート”を日本に広めたパイオニア・星新一の代表作。中でも『ボッコちゃん』『おーい、でてこーい』『ねらわれた星』などは、現代でも語り継がれる傑作です。
短いながらもどこか不気味で、鋭い風刺や社会批評が効いており、まさに「世にも奇妙な物語」的な読後感。読書初心者からベテラン読者まで、誰が読んでも必ず“何かが残る”ショートショートの宝箱。
一話完結で読みやすいため、「本を読むのが苦手…」という方や、子どもに読書を好きになってほしい親御さんにも超おすすめです。
日本以外全部沈没(筒井康隆著)
筒井康隆節炸裂!笑える・バカバカしい・でもどこか鋭い風刺が光る短編集。
タイトルを見て「これって…?」と思った方、正解です。あの『日本沈没』をパロディ化した表題作『日本以外全部沈没』は、まさにバカバカしさの極致。
他にも、農協のお年寄りたちが月旅行に行って宇宙人と宴会を繰り広げる『農協月へ行く』など、自由すぎる発想にページをめくる手が止まりません。「難しい話は抜きにして、とにかくナンセンスを楽しみたい!」という気分のときにぴったりな短編集です。
中国行きのスロウ・ボート(村上春樹著)
村上春樹さんの原点であり、世に送り出した、記念すべき初の短編集。
表題作『中国行きのスロウ・ボート』をはじめ、『土の中の彼女の小さな犬』や『午後の最後の芝生』など、7編の短編が収録されています。独特の語り口と余白のある世界観は、この時点ですでに“ハルキ節”が全開です。
中には、後の代表作にも登場する“羊男”がひょっこり顔を出すなど、春樹ファンにとっては見逃せない要素も。一編ごとに確かな余韻が残る構成で、長編とは違った春樹ワールドをじっくり楽しめる1冊です。
【静けさと余韻】心に沁みる文学的短編集
派手な展開や強烈な感動はない。でも、静かに深く心に残る。
余白の美しさ、言葉の余韻、死生観や内省に満ちた世界。文学的な短編小説の醍醐味を存分に味わえる作品を集めました。
短いながらも、読み返すたびに新しい感情が見つかる——そんな一冊に出会えるはずです。
心淋し川(西條奈加著)
江戸の片隅、淀んだ川沿いに暮らす貧しくも慎ましい人々の生活を、温かく、丁寧に描いた短編集。
タイトルの「心淋し川(うらさびしがわ)」とは、架空の川の名であり、そこに集う人々の心情をも象徴しています。登場するのは、失意の中でも一歩を踏み出そうとする人々。切なさや痛みもあるけれど、静かに前を向く姿に、読む者はいつしか励まされるようになります。
特におすすめは、『師匠』のために荒れた店を引き継ぎ、再生を目指す料理人の話。大きな事件や刺激はないものの、心にしみる読後感がたまりません。優しく静かな時代短編集です。
雪沼とその周辺(堀江敏幸著)
静けさの中に深い余韻を残す、“読後にひたる”タイプの短編集。
タイトル通り、「雪沼」という名の町とその周辺に暮らす人々の日常を淡々と描きつつ、その背景にある人生の揺れや繊細な感情の機微がじんわりと滲んでくる一冊。
最終話の「ラストゲーム」では、閉店前のボウリング場で過ごす老店主と若い男女のひとときが描かれ、静かで美しい読後感が広がります。他にも、わずかな身体の傾きが気になって仕方ない男の話など、“何気ないけれど何かが引っかかる”作品ばかり。ドラマチックな展開はありませんが、ページを閉じたあとに心がそっと揺れるような短編集です。
城の崎にて・小僧の神様(志賀直哉著)
わずか数ページの超短編。でも、読後に残る余韻は何十ページ分にも感じられる――そんな“静かな最高傑作”です。
普段は純文学にあまり馴染みがないという方にも、ぜひ読んでほしい作品。文庫でたった5~6ページの短さながら、城崎温泉の情景や主人公の死生観が鮮やかに浮かび上がってきます。
主人公は、東京で電車事故に遭い、背中の怪我の療養のために城崎へ。そこでの日々は読書と散歩だけ。けれど、その静かな暮らしの中で、「蜂の死」「イモリを殺めてしまった後悔」など、小さな出来事が次々と“生”と“死”を深く考えさせます。
派手な展開は一切ありません。でも、日々の中にある命の儚さと重みが、そっと胸を打ちます。静かで深い短編を読みたい方へ。
李陵・山月記(中島敦著)
格調高い文体と鋭い内省――これぞ“日本文学の名作短編集”。
表題作『山月記』は、今や国語教科書の定番。「臆病な自尊心、尊大な羞恥心、それゆえ切磋琢磨をしなかった怠惰」――この一文に、思わず自分を重ねてしまった経験がある方も多いのでは。
若い頃に読んでも響くし、年を重ねてから読むとさらに深く突き刺さる。そんな“読み返すたびに違う顔を見せる”短編集です。
【青春・再生・人生ドラマ】大人にも刺さる人間ドラマ短編集
「うまくいかない日々」や「立ち止まる人生」にそっと寄り添う短編を。
挫折、再出発、友情、葛藤…。リアルな人間模様が丁寧に描かれた、心にじんわり響く短編集を選びました。
がんばるあなたの背中をそっと押してくれる一冊が、きっとあります。
望郷(湊かなえ著)
湊かなえさんが描く、瀬戸内海の島を舞台にした6つの短編小説集。彼女の世界観を短編で味わいたいならこの作品!
家族、秘密、贖罪…それぞれの短編は独立した物語ながら、「生まれ育った土地」に向き合う登場人物たちの心情が静かに胸に迫ります。
中でもおすすめは、第2話『海の星』。父を失った少女と、その母親のもとに現れた中年男「おっさん」。数十年後に明かされる彼の“本当の目的”に、思わず息を呑むこと間違いなしです。湊かなえらしい“イヤミス”の雰囲気をまといつつ、どの物語も読後に嫌な余韻を残さず、深く心に残る構成。
ミステリー好きはもちろん、静かな人間ドラマが好きな方にもおすすめの短編集です。
夜を守る (石田衣良著)
池袋じゃない、木更津でもない。今回は「上野」が舞台の青春短編集。
石田衣良さんの作品といえば『池袋ウエストゲートパーク』が有名ですが、『夜を守る』ではその視点を“上野”に移し、街と若者たちのリアルな息づかいを切り取ります。
街の片隅で、人知れず「夜」を守る若者たち。ドラマチックすぎず、でも確かに熱いエピソードがいくつも詰まっています。どの話も読みやすく、爽やかな読後感で心地よく一日を締めくくれます。「なんだか街を歩きたくなる」そんな気分にさせてくれる、静かで熱い短編集。
チルドレン(伊坂幸太郎著)
不器用だけど憎めない男・陣内を中心に展開する、5編からなる短編集。
伊坂幸太郎作品の魅力であるテンポ感、会話の妙、意外な繋がりが本作でも存分に味わえます。最初の『バンク』では、銀行での人質事件に巻き込まれる中、「犯人は誰だ?」となります。
以降のエピソードでは、家庭裁判所の調査員となった陣内の“正義感あふれる暴走”が炸裂。ときに不器用で、ときに空気を読まない彼が、それでも他人を救っていく姿には、心がふっと軽くなるような感動があります。父親を尊敬できなくなった少年のエピソードは特に胸に残る1編。読後感が爽やかで、気軽に読めるおすすめの短編集です。
店長がいっぱい(山本幸久著)
人情味と笑いが詰まった“がんばる人の短編集”です。
丼ものチェーン「友々屋」の各店舗を舞台に、店長たちが1章ごとに主人公として登場する連作短編集。ホロリとさせる話から、クスッと笑える話まで、どの物語にも“ちょっと不器用だけど誠実な人間模様”が詰まっていて、読んだあとにふっと背中を押してくれる一冊です。
「人生って、いろいろあるけど、それでも何とかなるかも」そんな気持ちにさせてくれる、まさに現代の“応援短編集”。おすすめは「松を飾る」と「一人ぼっちの二人」。ややこしい伏線やモヤモヤもなく、読後は不思議と「よし、もう少しがんばろう」と思わせてくれます。
キッチン(吉本ばなな著)
吉本ばななのデビュー作にして、今もなお読み継がれる不朽の短編集。
収録されているのは、「キッチン」「満月」「ムーンライト・シャドウ」の3編。いずれも“死”をテーマにしながら、静かで優しい語り口で「再生」へ向かう人々の姿を描いています。
表題作『キッチン』では、祖母を亡くし天涯孤独となった「みかげ」が、同じ学校の「雄一」との共同生活を通して少しずつ前を向いていきます。『満月』では雄一視点に切り替わり、そして『ムーンライト・シャドウ』では恋人を事故で失った「さつき」の物語へ。
会いたさから自宅に何度も電話をかけたり、驚かせるために部屋に忍び込んだり——今では考えにくい“昭和のヤバい空気感”も、どこか懐かしく。
月とコーヒー(吉田篤弘著)
「この本は、寝る前に読んでください」、著者・吉田篤弘さん自身があとがきにそう記すように、夜に読むのがぴったりな24編の短編集です。
どの話も、大事件は起きません。驚きの展開も、涙を誘う感動もありません。けれど淡々と描かれる日常の風景と、不思議な静けさにいつの間にか心が引き込まれていきます。
物語どうしがほんのりつながっていたり、くすっと笑える瞬間があったり、そして読後には…ほとんど内容を覚えていない、というのもまた魅力。就寝前の読書に最適な「静かな」短編集を探している方に。
【豪華 作家陣が集結】一冊で何度もおいしい!有名作家の短編を一挙収録
小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇(伊坂幸太郎選)
「読書を辞めたくなったら、これだけは読んでほしい」、そんな伊坂幸太郎さんの思いが詰まった、珠玉のアンソロジー短編集。
芥川龍之介の名作『杜子春』から、切れ味鋭いミステリー『煙の殺意』、電車で噴出してしまったパロディ『ヘルメット・オブ・アイアン』まで、ジャンルも時代も超えた全13作が収録。泣ける・笑える・考えさせられる、まさに「小説の惑星」を旅するような読書体験が楽しめます。
初心者向けの触れ込みですが、文学的な深さもあり「ちょっと骨のある短編を読みたい」中級者にもおすすめです。

1日10分のぜいたく(あさのあつこ、小川糸、重松清他)
人気作家8人による“ちょっと贅沢な”短編集。
あさのあつこ、小川糸、いしいしんじ、小池真理子、沢木耕太郎、重松清、高田郁、山内マリコと、豪華すぎる顔ぶれが一冊に集結しています。日常の中にふっと染み込むような短編ばかりで、「ここで終わり?」「もっともっと読みたい!」と、続きが気になる作品もたっぷりあります。
感動あり、余韻あり、思わずくすっと笑える話あり——通勤電車やお昼休みに読むのにぴったりな1冊。

あなたとなら食べてもいい(柚木麻子・町田そのこ 他著)
柚木麻子、町田そのこ、彩瀬まる、島本理生など、人気女性作家7名による豪華短編集。
テーマは「食」。パンケーキ、焼きそば、コーヒー、ちらし寿司……すべての作品が「食のある風景」を舞台に展開されます。お腹が減ります。
心がじんわり温まる作品もあれば、思わずゾクリとするようなミステリー風味のものもあり、まさに味わい豊かな一冊。
難解さはなく、1日1話ずつ気軽に読めますよ。

最後に:あなたの「今」にぴったりの短編が、きっと見つかる
短編小説は、人生のどんな瞬間にも寄り添ってくれる存在。
ほんの10分の読書で、心が晴れたり、泣けたり、笑ったり——
あなたの「いま」にぴったりな一冊が、この中にありますように。
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