『テスカトリポカ』を読み終えたあと、同じような熱量を持つ小説を探しても、なかなか見つからないのではないでしょうか?
麻薬カルテル、臓器売買、国境を越える犯罪、アステカ神話。異なる要素が一つの大きな流れへと収束し、登場人物たちは血と暴力の連鎖へ巻き込まれていきます。
そこで本記事では、次の要素を持つ作品から5冊を選びました。
・異国を舞台にした圧倒的なスケール
・一族や血統をめぐる物語
・国家や歴史が生み出す暴力
・裏社会で生きる人間たち
・読者を圧倒する物語の熱量
『テスカトリポカ』のどこに惹かれたかによって、次に読むべき一冊が見つかるはずです。
まず読むならこの3冊
異国の歴史と一族の因縁に惹かれたなら → 『流』
血統を通して世界規模の暴力を描く物語が読みたいなら → 『ベルカ、吠えないのか?』
国境を越える犯罪ビジネスを描いた小説が読みたいなら → 『Cの福音』
『テスカトリポカ』に似た小説おすすめ5選
流(東山彰良)|台湾を舞台に血と歴史をたどる一族の物語
1975年の台北。17歳の葉秋生は、何者かに殺された祖父の死の真相を追い始めます。
台湾、日本、中国大陸へと広がる物語の奥にあるのは、戦争と内戦によって故郷を追われた一族の歴史。青春ミステリーとして軽快に進みながら、家族の血、民族、国家、暴力が複雑に絡み合っていきます。第153回直木賞を受賞した作品です。
麻薬カルテルを描く『テスカトリポカ』とは題材が異なりますが、異国の濃密な空気、一族に刻まれた過去、歴史の暴力を圧倒的な熱量で描く点はよく似ています。
読み進めるほど物語の流れが大きくなり、最後には一人の少年の青春と、国境を越えた一族の運命が重なります。台湾の土埃と汗が本から滲み出すような、5冊のなかでも総合的に最もおすすめしたい一冊です。
ベルカ、吠えないのか?(古川日出男)|犬の血統から20世紀を描く壮大な物語
戦争に翻弄された犬たちの血統をたどりながら、20世紀そのものを駆け抜けていく壮大な物語です。
物語の起点となるのは、無人島に置き去りにされた4頭の軍用犬。彼らの系譜は、第二次世界大戦、冷戦、宇宙開発を経て、マフィアが支配するロシアへとつながっていきます。軍用犬の血統から20世紀史を描くという、ほかに類を見ない構想です。
犬たちの軌跡を通して浮かび上がるのは、人間が繰り返してきた争いの歴史と、それでも命をつないできた生き物たちの力です。血統、国家、戦争、暴力が神話のようなスケールで語られる点は、『テスカトリポカ』と強く重なります。読者を振り落とすような文章の勢いにも圧倒され、最後には深い余韻が残ります。
ただし、犬が過酷な運命に巻き込まれる作品なので、犬好きの方には厳しい場面があるかもしれません。
宝島(真藤順丈)|戦後沖縄を駆け抜ける熱量あふれる青春叙事詩
第160回直木三十五賞受賞作。
第二次世界大戦の敗戦直後、米軍統治下に置かれた沖縄。米軍基地へ命がけで忍び込み、物資を奪う「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちを描いた物語です。第9回山田風太郎賞、第160回直木三十五賞、第5回沖縄書店大賞を受賞しています。
固い絆で結ばれたグスク、レイ、ヤマコ。そして、ある夜を境に行方が分からなくなったカリスマ的リーダー・オンちゃん。
若者たちの友情、成長、別れ、対立を軸に、戦後沖縄の苦しみと怒りが圧倒的な熱量で描かれます。裏社会や国際犯罪を描く作品ではありませんが、国家の都合に翻弄される人々と、人間臭く生き抜こうとする登場人物たちの力強さは、『テスカトリポカ』に通じます。
平和な時代に生きながら泣き言をいっている場合ではない。そう思わせるほどの力があり、不思議と元気が湧いてくる青春大作です。
Cの福音(楡周平)|国境を越える犯罪ビジネスを描くハードボイルド
フィラデルフィアで天涯孤独となった朝倉恭介は、自らの知力と肉体を武器に、悪の世界で生きることを決意します。
彼が作り上げたのは、コンピューターを利用した密輸システム。犯罪を衝動的な行為としてではなく、綿密に設計された国際ビジネスとして描いている点が大きな特徴です。楡周平さんのデビュー作であり、朝倉恭介シリーズの原点でもあります。
犯罪者を追う警察側ではなく、犯罪を実行する側の視点から物語が進むため、読者も危険な計画の内部へ入り込んだような緊張感を味わえます。
神話性や一族の物語という共通点はありませんが、国境を越えて構築される犯罪ネットワークと、善悪の外側で生きる主人公は、『テスカトリポカ』に最も直接的に近い部分です。
裏社会と犯罪ビジネスの面白さに惹かれた人へ、まずおすすめしたい一冊です。
ヒートアイランド(垣根涼介)|裏社会へ転がり落ちる若者たちのクライムサスペンス
渋谷を根城にするストリート集団「雅」を率いるアキとカオル。
仲間が偶然手にした大金は、凄腕の窃盗グループがヤクザの経営するカジノから奪ったものでした。逃げ場のない状況へ追い込まれた若者たちは、自分たちの力で危機を切り抜けるため、危険な作戦を立てます。
『テスカトリポカ』やほかの4冊と比べると、物語のスケールは小さく、文章も軽快です。
しかし、平穏な日常から裏社会へ足を踏み入れた若者たちが、暴力と知恵を武器に生き残ろうとする展開には、共通する緊張感があります。
複雑な歴史や神話よりも、犯罪小説としての疾走感をもう一度味わいたい人におすすめです。重厚な作品が続く今回の5冊のなかでは、最も読みやすい作品です。
『テスカトリポカ』のどこが好きだったかで選ぶ
異国の空気と一族の因縁 → 『流』
血統と暴力が連鎖する壮大な物語 → 『ベルカ、吠えないのか?』
歴史に翻弄されながら生き抜く人間の熱量 → 『宝島』
国境を越える犯罪と裏社会 → 『Cの福音』
スピード感のあるクライムサスペンス → 『ヒートアイランド』
よくある質問
『テスカトリポカ』に最も似ている小説はどれですか?
一冊だけ選ぶなら、『流』をおすすめします。
犯罪の内容が似ているわけではありませんが、異国を舞台に、一族の歴史、血の因縁、国家による暴力を圧倒的な熱量で描いている点が共通しています。裏社会や犯罪ビジネスを重視するなら、『Cの福音』の方が近いと思います。
『テスカトリポカ』のような壮大な小説はありますか?
壮大さを求めるなら、『ベルカ、吠えないのか?』がおすすめです。
犬たちの血統をたどりながら、第二次世界大戦から冷戦後までの歴史を横断します。人間ではなく犬を中心に20世紀を描く、独創的な長編小説です。
読みやすい作品から始めるならどれですか?
犯罪小説としてテンポよく読める『ヒートアイランド』がおすすめです。
裏社会の緊張感や暴力を扱いながら、物語がスピーディーに展開します。重厚な歴史小説や長編作品が苦手な人でも入りやすい一冊です。
まとめ|血と暴力の先にある人間の物語
『テスカトリポカ』の魅力は、残酷な犯罪や暴力を描いていることだけではありません。
国境や時代を越えて受け継がれる血、人間が築いた社会の歪み、そのなかで生き抜こうとする人々の力まで描いているからこそ、強烈な読書体験が残ります。今回紹介した5冊も、それぞれ異なる角度から、血、歴史、国家、犯罪、暴力と向き合った作品です。
迷ったら、まずは台湾を舞台に一族の運命を描いた『流』から読んでみてください。
『テスカトリポカ』を読み終えたときに感じた、物語の熱に押し流されるような感覚を、もう一度味わえるはずです。

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