この記事は、40代にして論文を書かざるを得なくなった筆者が『同士』に向けて記載しました。
そもそも何で論文なんて書かなければならないのか?
論文を書く必要があるけど何から始めればいいの?
教授が使う「学術的」な言葉の意味すら全然わからない
という、私と同じロングジャーニーをされている方に向けて記載しております。
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私は論文のプロでは全くありません、むしろ全くの逆です。だからこそ、人よりも分からない事は分からないと食いつき、右往左往し続けて見つけた「論文の書き方」のTIPSを一生の記念、備忘も兼ねてまとめてみました。
2023年12月現在、私は大学院の2年生、論文は最終稿(約10万文字・約100枚)を提出した段階です。
※文字数が8,000文字近くになったので5,000文字程度でページを分けました。もちろん、続きも無料なのでぜひ参考にして下さい。
執筆を始める前の超ネガティブマインド
「書き方」以前に、「面倒くさい」「何をすれば良いのか全く分からない」「教授が話している言葉の意味が分からない」といった状態でした。
自分自身で選んだ道でありながら、40歳を超えて、人生初の修士論文執筆。『論文がこの社会に何の役に立つのか』『書く事によって自分自身にどんな良い事があるのか』という、低次元の反発心もありました。
アカデミックな世界に対する距離感もあり、色々な説明や講義を聞いても正直イライラ‥難しくない事を難しい言葉で表現する事がアカデミックの世界か!(完全に偏見)と内心では思い続けていました。
この、ゴールデンサークルのど真ん中(WHYの部分)を自分自身へ腹落ちさせる事に数カ月を要しました。
執筆に前向きになれたきっかけ
ずっとネガティブな気持ちのまま半年が経過、WHYが落ちていないため全く進みません。
そんな中、マーケティング協会にいる先輩のたった1つの言葉で前向きに転じました。「論文は、マーケティングとは時間軸が全く異なる。論文(研究)は、より良い世界を目指し、過去の人・未来の人と一緒に共創するものであり、時間軸を数万年で考えると良い」と。
過去の人たちが積み上げてきた様々な知見を1㎜でも1μでも高くすることが、論文を書く意義と言われ、単純な私は納得。未来のために書こうと言う気持ちになりました。
リサーチクエスチョンとは
私はこの2年を費やす論文で「何を明らかにしたいのか?」
気持ちだけが先行するも、何から手をつけて良いのかが全くわからない状態は同じ。『論文の書き方』『問いの立て方』『研究とは』といった書籍をとにかく乱読し、関連するYoutube番組も数多く視聴しました。
しかし「論文は一定水準をクリアすればOK」と考えている私にとっては、大半がオーバースペックな内容です。これも偏見かも知れませんが、実際に論文を書き慣れている方の説明はどうしても難しい。
悩みに悩み、先生へ相談し所、第1歩としては「リサーチクエスチョンを決める事」とアドバイスを頂きました。
「リサーチクエスチョン」これは「問い」と同義と捉えています。すごく簡単に言うと「何を明らかにするか」です。
変に恰好を付けて小難しいテーマを選ぶと長い論文の制作は耐えられません(笑)
注意点1:その問いは検証できるのかな
創り上げるのはあくまでも論文です。そのためにはアンケートやインタビューで測定できなければなりません。(これは意外とポイント)ロジカルに測定できない‥例えば「黄泉の国は本当に存在するのか」などはNGです。
繰り返しますがアンケートやインタビューなどを活用して測定できるのかが重要なポイントになってきます。
注意点2:範囲は狭く狭く、とにかく絞って
範囲はとにかく狭く・狭くしておく事。例えば「世界中のZ世代は、X世代よりもSNSの情報を信やすいのか否か」というリサーチクエスチョンを設定してしまうと「世界のZ世代」を対象にした調査が必要になります。
これができるのであれば問題ないですが、難しいですよね?であれば、「東京都港区に住み、Z世代に属する大学生は、同じエリアに住んでいるX世代よりも友人が発信したXのポスト情報を信じて行動する傾向にあるのか否か」と狭めるイメージです。
先行研究・理論背景とは
シンプルに過去の人たちはどんな研究をしてきたのかを見る事は凄く大切
テーマが決まり、リサーチクエスチョンが決まり‥さて調査に入ろうかというのは少し急ぎ過ぎ。
冒頭に記載しましたが論文の世界は「過去の仲間たちと共につむぐ」必要があります。(ここの考え方を理解するのにも凄く時間がかかりました)
この部分をアカデミックワールドでは「巨人の肩に乗る」と表現するようですが、私にはピンと来ず「過去の仲間と一緒につくって未来の仲間にわたす」という表現がピンときました。
具体的には自分のテーマ(単語等のキーワード)を以下のサイトで検索し、同じような事をしてきた仲間を探す作業をします。先人の論文を全部読んでいたらキリがないので、サマリーをチェックしながらピックアップ、私は20~30程度の論文を参考にしました。
Google Scholarはこちら
https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=jaCiNii Research – 国立情報学研究所はこちら
https://cir.nii.ac.jp/筆が進む『書き方のコツ』みたいな話を1つ。
自分のテーマに近いものを見つけた場合、その論文の最後にある「残課題」や「当研究の限界」をチェック!その部分を「自分が代わりにやってみる」というのが一番簡単な論文の書き方ではないかと「執筆から1年半が経過した今」では思います。
誤解を恐れずに書くと、上記の「残課題」にトライして失敗しても大丈夫です。
注意点:先行研究が存在しないテーマは避けた方が無難
私のような初心者にはかなりリスキーなのは「全く誰もやった事のないテーマを選ぶこと」=「先行研究が存在しない」、このテーマは避けた方が良いと思います。
マイルストーンとして設定される報告会において、主査・副査からは必ず「先行研究は?」という質問が出ます。「無い」と答えた後「その研究に学術的価値・実務的価値はあるのか?」という追加質問に答えるのが極めて難しいからです。
実務的価値に関しては説明できるかも知れませんが、大変なのが「学術的価値」…先行研究があれば「先人が研究する価値を証明している」という考え方になります。(先行研究は否定されない事がルールのようです)
繰り返しますが、論文の書き方のコツとしては
と言うのが私自身の経験です。
具体的な目次のつくり方
「型」に沿って書くのが楽ちんです
色々な勉強を重ねた結果分かった事、それは「書き方(目次・流れ)」にも様々なパターンがあるという事です。決まった形は存在しません。が、可能な限り基本・型に忠実に私が書いた流れは以下の通りです。
・要約、キーワード
・はじめに
・先行研究レビュー(複数)
・調査(2次データ調査⇒予備分析⇒デプスインタビュー)
・分析(SCAT分析)
・考察
・結論と展望
・残された課題
・謝辞
・参考文献
・参考資料
上記はあくまでも私の実例ですが、私がバイブルとして活用した以下『論文の書き方』に掲載されていた流れも記載しておきます。ちなみにですがこの本は最強です。論文執筆初期に読んでいれば半分の時間で済んでいたかも知れないとさえ感じる1冊。余力がありましたらぜひ一読されてはいかがでしょうか?ぜひクリックして他の方のレビューも確認ください!
『はじめに』パートへ記載した事
このパートで私が記載した事は「なぜこのテーマを選んだのか(研究背景)」「研究を通して明らかにしたいこと(リサーチクエスチョン)」「おおまかな進め方・手法(先行研究⇒調査⇒分析)」「学術的貢献(〇〇という先行研究・理論背景に世代と言う視点を加えた)」「実務的貢献(こういう事に困っている〇〇の一助になる)」これくらいの感じです。
先行研究レビューパートに記載した事
書き方のTIPSとして、他の方が書いた論文を自分の論文にも盛り込むことは全く問題ないです。『引用』という魔法の記載方法を用いればパクリにはなりません!
引用の記載方法についてはWebで検索すると大量に出てきますので省きますが、他人の論文を自分自身でまとめて記載する引用方法(いわゆる間接引用)、間接引用を制する事ができれば論文の文字数などは簡単に条件を突破できます。
イメージとしてはAさんが書いた論文を間接引用する場合、〇〇(20**)は「 」と論じた、一方で××(20**)は「▲」と論じた…このような感じになります。(詳細は確認下さい!)
ここのパートはひたすら先行研究(先人が書いた論文)の引用を積み上げました。ページ数にして約〇ページ。ひたすら〇〇は××と論じた‥を積み重ねながら、補足的に自分自身の解釈・考察を埋め込む形で完了しています。
調査パートへ記載した事
質的研究(定性的)を選択したため、あくまでも本丸は最終のデプスインタビューです。
しかしながら、デプスインタビューの精度を上げるため、説得力を上げるため、最終的に導く仮説のための仮説づくりが必要です。突然、インタビュー時にAを聞いてみたとした場合、Aを聞いた根拠を問われると回答が難しくなります(恣意的ではないか!と)。
よって、最終的なインタビューの設問を設計するためにも2次データ分析や予備的インタビューは非常に重要だと思います。(いやらしい話ですが段階を踏むというプロセスがこの世界ではすごく評価・重要視されるのだなというのが実感です)
私の場合は、テーマが企業ブランドであったため「ブランドジャパン」「インターブランドのブランドランキング」等を分析しながら、現在の〇〇は××だと読み取れるかも知れないと仮説の仮説を創り、その後、簡易インタビューを行ってある程度の確証をもってデプスインタビューへと臨みました。
注意点:アンケート調査(定量・一般化)かインタビュー調査か(定性・個別)
ずばり、統計学のプロでない場合は「質的調査=定性的調査=インタビュー」をおすすめします。
私自身、アンケート調査は実務で何度も実施したことがあり、知識もゼロではないですが学術論文のアンケート調査、統計解析による一般化は非常に難しいです。検定手法の知識もさることながら、アンケート設計自体にも厳しい突っ込みが入るため、よっぽど自信がある 或いは よっぽど一般化したい理由がある場合を除いて踏み込まない方が私は良いと思います。
一方、「質的調査=インタビュー調査」は文字通りテキスト解析であり、筆者自身の経験を踏まえながら解釈する事に意義があります。よって恣意的である事はある意味で折り込み済みになるため、初学者にとってアンケートよりはハードルが低くなると思います。
そして、書き方のコツになりますが先行研究(過去の論文)で使っている調査設計・インタビュー設計に1、2問加えるというがお勧めです。別分野で使われた調査・インタビュー設計でもOKで、設計の合理性みたいな事を聞かれた際には〇〇年に出された査読付き研究××で使われた調査に準拠している、これで大きくは大丈夫です。
注意点:『調査手法』の科学的合理性とは
私の経験で???となってしまった質問に「その調査手法の科学的合理性を説明せよ」がありました。
科学的合理性と聞くと身構えてしまいますが…質問趣旨はめちゃくちゃシンプルで、何故、その人を対象に・その場所で・その手法でやったのかを自分の言葉で言え、です。
あくまでも例ですが、研究テーマがZ世代なのでその中心年齢であり、日本全国への影響力も強い首都圏在住の大学生を対象にした。筆者の年齢と学生の年齢のギャップやインタビュー慣れしていないという事実とコロナも終息傾向にある事から彼らが慣れ親しんだキャンパスで実施した。アンケ―トを設計できるほどの知見が自分自身になく、今回はインタビューと言う質的調査を選んだ‥書き方としてはこのような内容をしっかりと記載するのがポイントになります。
分析パートに記載した事
文字通り、調査結果の分析をします。
インタビュー調査はある程度の恣意性が折り込み済みとは言え、当然ながら一定程度の合理性が求められます。
Aさんがこんなこと言っておりました、Bさんがこんなことを言っておりましたは論文ではなく、ただのインタビューです。一定のコード化・構造化・理論化が当然ながら必要になります。
そこで登場するのが私の中では救世主、名古屋大学の大谷教授という方が発明されたSCAT分析です。詳しくは、大谷先生の以下の書籍(クリックして他の方のレビューも確認ください!)を1冊読むと1000歩研究が進みますががポイントは、
①初学者でも可能
②少ないインタビューでも活用できる
③全てのプロセスが可視化される
の3点、特に③は私にとって救世主でした。
説明会では最初に「恣意性を排除することが難しく『SCAT分析』を用いました、SCAT分析はローデータから構成概念が生まれる迄の全てのプロセスが見える化するため、多くの批評を頂けると思ったからです」と発言。これにより恣意性に対する質問やコード化のプロセス不備の指摘は無くなります。
この分析手法で約5万文字を解析し、かけた時間は約1カ月、これくらいかけるを費やす価値は十分にあると思います。
『考察』『結論』『謝辞』について
考察・結論では一般的に以下のような内容を書きます。
「リサーチクエスチョンへの答え」「結果の解釈」「結果の意味合い(こういう所が独自性があるし、学術的にも実務的にも貢献するんだよ)」「研究の限界」「更なる提言」です。
研究の限界は文字通り限界を書きますが、イメージが沸きにくいので私の場合‥「サンプル数が少なくて統計学的に有意とは言えない」「インタビュー対象者に偏りがある可能性」「分析を1人でやったので恣意性を排除できない」この3点でまとめました。
文字通り、出てきた分析結果について自分自身の意見を書き、結論付け、教授や家族への謝辞を記載して論文は終了になります。(家族に感謝したいと思います、指導頂いた〇〇教授には感謝の意 など)
私の場合、書き始めるまでと最後の分析に非常に苦しみましたが、それ以外(特に考察や結論)は比較的楽しく執筆できたと思います。
要約と要旨の書き方(最後に書くことになると思います)
論文の最初に書く要旨、論文とは別モノとして提出を求められる要旨、これの書き方の違いについても地味に悩みました。
要約
色々と難しい書き方を示しているWebサイトもありますが、本当に論文本体をまとめればOKのようです。本研究の主題はこれこれで、こういった手法でこういう事を目指します、とザっと記載。
その後、第1章から最終章迄、第1章は~を検討した、第2章は~の示した‥と淡々と書けば大丈夫。長くてもA4用紙1枚程度、論文全体のガイドラインのようなイメージで書きました。(キーワードもその下あたりに書けばOK)
要旨
これは要約よりはもう少しボリューミーになるかと思います。「ここだけ読めばだいたい書いてあることが分かる」というまとめになります。
要旨を書くために必要になるのは「文章センス」でも「こじゃれた表現」でもなく、テンプレートに従う事が大切だそうです。
私が指導を受けたのは以下、「論文の問い(リサーチクエスチョン)」「言葉の定義」「先行研究レビューにより明らかにされている点と明らかにされていない点」「研究目的(明らかにされていない点の反転)」「研究の手法(アンケート調査?インタビュー調査?そしてそれは何故を端的に)」「結果と考察」になります。
私の場合はよりコンパクトにまとめるため研究の背景、本研究の目的、本研究の手法、本研究の結果、本研究の結論の5つにしましたた。
5つの要素をタイトルにA4用紙2~3枚でまとめるイメージです。論文全体を宣伝するつもりで記載しました。
論文の書き方TIPS!本研究・当研究・当論文・本稿の使い分け
結論を申し上げると、かっちりとしたルールは無いようです。主査の先生に言われた通りに書くのがベストと思います。(小難しい事を書いている書き方マニュアルもありますが無視)
私は論文本体では「本研究」で統一、要旨は「本稿」で統一しました。後者を本稿としたのは少ない文字数でまとめる必要があったためであり「本研究」で統一しても何ら問題はありません。
私が実際に試し、良かった論文の書き方やコツ
流れを身に着けるためTTPを実施する(TTP=徹底的にパクる)
最初は「筆」が進みません、その場合は他の方が書いた論文をコピーして貼り付け、自分の研究テーマにそって単語を差し替えていく、この方法が「論文の流れ」「リズム」を理解するのに非常に有効でした。
もちろん、そのままの状態で出すのはダメですが、流れが身体で身に着くと自然と筆は進んできますので、1行も書けない、という方はぜひ試していただければと思います。
文明の利器(Pomera250)を導入する
新しいガジェットでモチベーションが上がるタイプ‥というのもありますが、「文字の打ち込み特化した専用端末(インターネットも何もできず、マウスすら無い)pomera250」を使う事もお勧めです。
ノートパソコンより小さくて軽く、そしては何より書く以外の機能がないため、ひたすら文章に没頭できます。設計も没入感を考慮して創られているようで、パソコンを使っている目移りして進まないという方は一考頂いてよいかもしれません。(書く専用なので記述に便利な『誤字脱字の検閲』などは標準装備です)
3万を超える出費は痛いですが、必ず元が取れます!
↓私の別記事です。
Chat GPTに検閲させる
できあがった文章をChatGPTに検閲させることも非常に時短になります。何度チェックしても次から次へと稚拙な文章が発見されてしまい嫌になった最終段階、ChatGPTに助けられました。
1点だけ注頂きたいのがChatGPTを使って文章を作る事は『注意』ください、いたちごっこですがChatGPTを使ってつくった文章か否かを見極められるソフトもあるらしいので‥
主査・副査の特徴を見極める
寝技系の話になりますが主査・副査の先生と良好な関係をつくる事も極めて重要です。
先生によって特性があり、なんでもかんでも聞いてくるな!自分で考えろ!というスタンスの方、何でもかんでも聞いて欲しいという方、そのあたりは早めに懐に入り込んで確認するしか術がありません。そして確認しておくと後々楽です。
また、非常に原始的ですが効果的なやり方として「現地に足を運んで教えを乞う」ことが効く思います(体験談)。 面倒ですがオンラインやメールよりも遥かに有意義なディスカッションができると共に、各種発表会の中で「直接教えを頂きましたが」というワンフレーズはかなり良い感触を得ました。
各種発表会での心構え
質問が出て答えに詰まった際は、次回の発表会、或いは最終試験でそこに回答すれば良いだけです。逆に何も質問が出なかった場合は要注意、素晴らしいか/ 質問もできないレベルにひどいか のいずれかです。
最後に
以上、徒然なるままに記載してきました。
復唱になりますが私は論文に関しては完全な素人です。だからこそ分かる部分もあると思い記事化しました。
40歳を超えてはじめて論文というものにトライしました。頭もカチカチな中、人よりもたくさん回り道をしてきた経験(書き方や考え方)が少しでも参考になればと思います。
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