「ガール」や「マドンナ」の読者からは女心が怖いくらいわかる作家と言われる奥田英朗さん。もちろん、それだけではなくミステリーからユーモアあふれる伊良部シリーズまで数多くのヒット作品があります。
本記事では、奥田秀朗さんの作品の中から特におすすめの5冊を厳選してご紹介。
「スカッとする小説が読みたい」「小説を読んで爆笑したい」「小説を読んで元気を出したい」、色々な読書モチベーションにも応えられるラインナップです。奥田さん初心者にも、長年のファンにも楽しんでいただける名作を集めました。
スカッとする作品から爆笑作品まで、奥田英朗さんのおすすめ小説7冊
ガール(奥田英朗)|講談社|2006年刊行|働く女性たちのリアル描いたスカッと短編集
30代の女性たちの葛藤をユーモラスに描いた5編の短編集。
表題作「ガール」では、年齢を意識しながらも“女”であることに心があっちへこっちへと揺れるキャリア女性の姿が、リアルで時に皮肉に切り取られています。登場人物たちは誰もが息苦しさを抱えながらも立ちふさがるお年頃。理不尽さや壁に対する彼女たちの反撃や吹っ切れる瞬間に、なんともスカッとして心が軽くなります。
奥田英朗が男性でありながら、なぜここまで女性の心理を描けるのか、その観察眼とユーモアに唸らされる一冊です。
マドンナ(奥田英朗)|講談社|2002年刊行|中年サラリーマンの悲哀を描く短編集
モテたい人は読んだ方がいい!
『ガール』と対になるように、今度は男性サラリーマンたちの“等身大の現実”を描いた短編集。部下の女性に淡い恋心を抱く男、女性上司の改革に戸惑う中間管理職、家庭と仕事のはざまで揺れる父親。どの人物も滑稽でありながら、どこか愛おしい。
ワークライフバランスを重んじる登場人物や、合理的に職場を変えていく登場人物など、現代にも通じる価値観が表現されています。昭和の香りが残る企業文化と、令和の働き方のはざまで葛藤する姿は、笑いと共感を誘います。会社という舞台に生きる人々の誇りと迷いを、大人のための一冊です。
無理(奥田英朗)|文藝春秋|2009年刊行|地方都市に生きる人々の「無理」を描く群像劇
寂れゆく地方都市を舞台に、生活保護課の職員、女子高生、詐欺まがいの営業マン、市議会議員、宗教に傾倒する女性。
異なる立場の5人の人生が少しずつ交錯していきます。そして、どの登場人物も救いがなく、それでも必死にもがきながら生きている姿に、胸が締めつけられる。
貧困や孤独、信仰、家庭崩壊といった社会問題を真正面から描きつつ、どこかユーモアを感じさせるのは奥田英朗ならでは。タイトル通り「無理」「無理」「無理」と言いたくなる現実の積み重ねの中に、それでも人がもがきながら生き続ける意味を問いかける。重くも目が離せない小説です。
最悪(奥田英朗)|講談社|2001年刊行|“最悪”が交わる、最悪の小説
町工場の社長、銀行員の女性、チンピラ──全く接点のな3人が、それぞれ小さな選択の積み重ね(ミス)で次から次へと転落していく。
資金繰り、セクハラ、裏社会との関わり…日常の延長に潜む「最悪」は、誰にでも起こりうる現実として迫ってきます。
全編に漂う閉塞感と不運の連鎖は、読者を容赦なく追い込みながらも、656ページの長編を一気に読ませます。タイトル通り“最悪”な出来事の果てに、それでも人が生きていく姿を描いたヒューマン・サスペンス。
イン・ザ・プール(奥田英朗)|文藝春秋|2002年刊行|大爆笑、奇人名医・伊良部シリーズの原点
伊良部総合病院の神経科を舞台に、破天荒で無茶苦茶な精神科医・伊良部一郎が、悩める患者たちを型破りな方法で治療していく全5編の短編集。
初診の「いらっしゃーい」と注射で迎える伊良部先生が、携帯・ネット依存、プール恐怖症、などなど現代的な悩みをコミカルに解決し、読後は不思議と肩の力が抜けます。
プール依存症、携帯依存、心気症など、現代人の身近な不安をテーマに、ドタバタしながらも最終的には“気づき”へと導く構成が心地よい。
子どものように無邪気で常識外れな伊良部の言動に、最初は戸惑う患者たちも、やがて心の重荷をふっと下ろしていく。シリーズの原点(2巻「空中ブランコ」、3巻「コメンテーター」)にして、読むだけで気分が晴れる名作です。
口コミまとめ|読者に愛される奥田英朗さんの人気作
奥田英朗さんの作品は、読書メーターなどの読書コミュニティやSNSでも、多くの読者からポジティブな感想が寄せられています。その中でも特に人気の作品が次の3冊です。
ガール
「昭和の企業文化を思い出す」「ライフワークバランスを考えさせられた」と昔を懐かしんだり、共感したりする声が多く記よせられています。「読むと自分の職場がちょっと優しく見える」との感想も。なんといっても男性作家が描いた女心の鋭い描写に対する評価が圧倒的です。
無理
5人の視点が交錯し「人間の愚かさがえぐられる」「読後にずしんと残る」との声が多くポストされています。
救いが少ない物語ながら「怖いもの見たさで読むのを止めることができない」「現代の閉塞感を見事に描いている」と高く評価。「最悪」「邪魔」と共に社会派長編として人気です。
イン・ザ・プール
「破天荒なのにあまりにも無茶苦茶すぎて逆に癒される」「とにかく笑って笑って肩の力が抜ける」と好評を博しております。伊良部先生の“果たして治療なのか遊びなのかわからない”診察と、患者との掛け合いが魅力。「くだらないけど嫌いになれない」「落ち込んでるときに読むと元気になる」と、シリーズ屈指の人気作です。
まとめ|奥田英朗さんの小説に触れる第一歩
社会を鋭くえぐったミステリーから、伊良部シリーズのような爆笑エンタメ小説まで、奥田英朗さんの物語は一言で語ることができず、ぜひ様々な作品と接点を持っていただきたいと思います。
今回ご紹介した5冊や口コミで人気の作品は、どれも奥田英朗ワールド”を体感するのにぴったりのおすすめ本です。気になる一冊から手に取り、ゆっくりとその世界に浸ってみてください。


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