今日は、軽い物語よりも、じっくり読める一冊がほしい。
読み終えたあと、心に静かに重みが残るような“骨太な小説”を17冊集めました。社会派の大作、歴史や見知らぬ土地の空気がすぐ近くに感じる物語、価値観をそっと揺さぶってくる小説、そしてノンフィクションまで。
重厚で読み応えのある作品ばかりなので、時間のある日に、気になったタイトルから手に取ってみてください。※ネタバレは避けています。
重い本の気分じゃない方へ:通勤中でも読める短編小説のまとめもあります(短編小説おすすめ記事へ)
今日はやさしい読後感がほしい方は、読後にほっとする小説まとめもどうぞ(癒し・優しい小説記事へ)
小説(野崎まど著)
小学生の頃から小説を読む「意味」や「意義」を自分で考えたり、友達から「なんでそんなに本を読むの?」と聞かれた時の回答を考えてきた私にとっては「とてもスカッとする小説」でした!
圧倒的に読む才能がある主人公、そして圧倒的に書く才能のある友人、世捨て人となった小説家、それほど多くの人物は出てきませんが、「小説を読む」ということ意味を言語化してくれた素敵な本です。
世界中の読書好きの方へお勧めしたい作品です。
テスカトリポカ(佐藤究著)
第165回直木賞、第34回山本周五郎賞の受賞作。
両親を殺めた身長2メートルを超える少年、密売に手を染めるメキシコマフィアの4兄弟、闇医療を行う凄腕の元医師、中国マフィアとベトナムマフィア、もちろん日本で闇の世界に生きる人々まで。 これでもかと相次ぐ残酷な描写に古代アステカの儀式や暦。
書いてるだけで訳がわからなくなりそうですが一気読みです。読まれた方は共感頂けると思いますが、脳が痺れる作品です。
正欲(朝井リョウ著)
ダイバーシティ推進・多様性の尊重・LGBTQ問題など、フワフワしたトレンドワードに振り回される私は横っ面をはたかれた感じがしました。
「多様性やダイバーシティを口にできるマイノリティ」は「真のマイノリティからすれば守ってもらえるマジョリティである」という言葉が衝撃的。
口に出せない性的嗜好(水に興奮 風船に興奮など)が原因で常に世の中から疎外されたと感じる人たち、様々な感情が揺さぶられるので良い意味でモヤモヤした読後感です。
告白(町田康著)
なぜ「彼」は大量殺人に導かれたのか?大阪でおきた「河内十人斬り事件」を題材にした超大作。
周囲とうまくコミュニケーションが取れず、村の中でいじめにあっている主人公。徐々に徐々に少しずつ積もってくる憎しみや憤り、良くしようと努力すればするほど悪化していく関係性、行き場のなさや葛藤。
重い題材ですが、関西弁特有のユニークさも交えながら描かれているので決して暗いだけではありません。強烈な一冊です。
フェルマーの最終定理(サイモン・シン著)
今までの人生40年強で全く気付かなかった『数』の美しさに終始魅了されました。
この本を読んでいたなら「数字」というものに興味を持っていただろうなという感想。(解けないとされた数式に挑む)謎解きのワクワク感も一級品で、全ては理解できませんがとにかくすごい。
川から海までの直線距離と、蛇行して海まで続く実際距離の比は3.14に必ず近ずくなど、雑学もあちこちに。謎を謎として敢えて残し、最後まで証明しなかった、フェルマーの意地悪さがまたセクシーです。
ダブリン市民(ジェイムズ・ジョイス著)
閉塞感が漂う、重く暗い昔のアイルランドの首都ダブリンを舞台に、 金持ちな人・貧乏な人・若者からお年寄り・男性も女性も、そこで暮らす市民達の生活や葛藤、感情の麻痺を切り取った作品です。
難解な表現も多く、 当時の歴史やダブリンの知識が不足していることもあり全てが理解できたのかどうかは分かりませんが、薄暗いダブリン市でもがきながらも生活する1人の市民になれました。まさに重厚で骨太、じっくりと読書を楽しみたい方へ。
震える牛(相場英雄著)
実際に起きた事件をベースにして書かれた社会派サスペンス。
巨大スーパーの進出で衰退する地元商店街、食品の偽装問題、そして腐りきった警察内部の事情などなど様々な観点から社会問題にメスが入ります。
純粋なドキュメンタリーは疲れてしまいますが、こちらは適度にマスキングされたフィクション小説。エンターテインメント要素もあり、作者の筆力でどんどん読ませ、後半の畳みかけは圧巻。そして最後の余韻に震えます。
社会の闇に引き込まれるタイプが好きなら、読み終えた瞬間に景色が変わる“どんでん返しミステリー”もまとめています(どんでん返し小説131選へ)
流(東山彰良著)
舞台は台湾、街の土埃や人々の汗が紙面にも染み出してきそう物語。
読む人を選ぶとは思いますが私の中ではベストの1つです。The 骨太小説を探されている方には、自信をもってお勧めさせて頂きたい1冊。多くを語りませんが重厚です。
熱源(川越宗一)
アイヌの矜持を描いた、骨太な叙事系小説です。
ロシア人と和人の板挟みになり、アイデンティティを守るのか、命を守るのかを迫られるアイヌ民族が題材です。複数いる主人公の中には「アイヌ民族」を日本の歴史に刻むため「南極志願隊」にも参加します。
アイヌの方々の名前やロシアの方々の名前が難しく、最初はとっつきにくいかも知れませんが、北海道や樺太という寒い台地を舞台にした熱い、熱くて骨太の小説です。
宝島(真藤順丈著)
北海道を舞台にした作品の次は敢えて沖縄、戦後の沖縄を舞台にした叙事詩です。
元気が出るというのか、不思議なパワーが沸いてくるというのか「熱量」が圧倒的な作品。敗戦直後の沖縄で、米軍のキャンプ基地に命懸けで忍び込み、略奪する事で生きがいを見つける若者たち、そして行方が分からなくなるリーダー。
平和な時代に生きる身で泣き言をいってる場合では無い!と思わせてくれる一冊です。それぞれの成長、別れ、対立、人間臭く生きる人々を描いた大作です!
ヤノマミ(国分拓著)
は唯一のノンフィクション作品。ブラジルとエクアドルの国境に原住民「ヤノマミ」を長期に渡って取材したノンフィクション小説です。
あまりの衝撃・迫力・臨場感・悲哀、そう言った複雑な感情がこみあげて来る超大作です。NHKのクルーに本当に心から感謝したい作品。シャノボという仕切りのないドーナツ型(直径60メートル)の住居に住む150人を超える集団。男性の一部は何もまとわず、女性も伝統の赤い布を腰に巻くだけ。
人間は精霊となり最後には虫になるという世界観、子供が生まれても育てるか否かるかは母親1人が決める風習(否の場合はシロアリの巣に捧げます)。
そんな社会にもヒタヒタと近づいてくる文明の音、徐々に崩れ行く価値観、ノンフィクションの大傑作だと思います。
レディジョーカー(高村薫著)
あの有名な未解決事件(グリコ森永事件)をベースにした小説で、腐って澱んだ暗い底なし沼にずるずると引き込まれる感覚になる小説。
この作品の暗さと重さは癖になります。グリコ森永事件の解決はあと一歩だったかも知れないと思わせる作品。
白村江(荒山徹著)
蘇我入鹿、葛城天皇、高句麗、百済、新羅、唐等々、ひたすら暗記する事に追われた学生時代ではなく、社会人になった今だからこそ歴史小説を読むと純粋に楽しめて本当におもしろい。
「白村江」って何だっけ?と思う方にはぜひ読んでいただきたい。壮大なストーリーの先の先のそのまた先、最後の最後に感涙が待っています。
歴史の厚みが好きな方は、時代別に楽しめる歴史小説のまとめもあります(歴史小説おすすめ記事へ)
革命前夜(須賀しのぶ著)
音楽に魅了され旧東ドイツに留学した主人公。音楽との向き合い方、友人、恋、そしてにわかにせまってくる革命の足音。
明るくはないですが暗くはなく 、重厚で、じっくりと楽しみました 。東欧に特有の色が少なく、空気が薄い描写が個人的には大好きです。そして、 帯を書かれた方と同じく「読後は放心状態」(ミステリーとしても楽しめますよ)になります。
利休にたずねよ(山本兼一著)
「日本」「和」ならではの世界観と美意識、本の冒頭から最後まで色っぽく・艶っぽく、とても残酷な小説でした。
他の人よりも鋭くて優秀すぎると権力者からは疎まれるのは今も昔も変わらず。読後の余韻が長引く、すごい小説です。物語内の時間軸の使い方も巧みで、千利休がめちゃくちゃ好きになりました。
永遠の仔(天童荒太著)
児童精神科に預けられ、共に育った3人の子供たち。色々な思いを抱えながら大人になり「再会」することで始まる物語。
冒頭からほのかに漂う不穏な空気、メンタルがしっかりとしている時にぜひ読んでください。文章はとても読みやすく流石の作品。本の表紙は「表紙が怖いランキング」入れたくらいトラウマ級の怖さです。
泥の河(宮本輝著)
高度経済成長期の昭和半ば。
河岸に住む貧しい家族と、更に貧しく小舟で生活する家族、その子供たちの出会いと別れを描いた作品です。切なくて苦しくなる一冊でしたが、情景が浮かび、登場人物の心の機微が手に取るように分かる、これこそが作家さんの力かなと思いました。読んでよかった。
Q&A
Q1. 「骨太な小説」って、どんな作品のこと?
A. テーマが重かったり、読み終えたあとに深い余韻が残る作品を、この記事では骨太と呼んでいます。
Q2. 読む順番に迷ったら、どう選べばいい?
A. どれも最高の作品です。タイトル・時代・場所などで惹かれた一冊を選ぶのがいちばん失敗しません。
Q3. どれも重そうで不安。読み切れる?
A. 重い題材でも、文章のリズムが良いものを揃えたので一気読みできます。ただコンディションがきつい日は無理せず、気になった時に少しずつも楽しいです。
Q4. ミステリー好きでも楽しめる?
A. 楽しめます。事件や謎そのものよりも、人間の業や社会の闇に引きずり込まれるタイプが多いので、「ミステリー」が好きな方ほど相性が良いはずです。
最後に
軽く読める小説も好きですが、ときどき「読書したな」と思える一冊が恋しくなります。骨太で重厚な物語は、読むのに体力がいるぶん、読後に残る余韻も格別です。
この17冊は、ジャンルは違っても、読み終えた後に心が動く作品ばかりです。気になるタイトルがあったら、ぜひ時間のある日にゆっくりどうぞ。読み終えたら、次は同じ作者や同じテーマの作品へ――読書の沼が、きっと気持ちよく広がっていきます。


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