時代を超えて読み継がれる名作から、今注目の新しい歴史小説まで──
戦国の知略、江戸の人情、幕末の熱、明治の決断。物語の背景にあるのは、どこか今と重なる“人の生きざま”です。
本記事では、読書歴200冊×20年以上の筆者が、自信を持っておすすめする歴史小説19作品を厳選しました。戦国武将の壮絶な決断から、職人や市井の人々の静かな闘い、名もなき者の誇りまで。読みやすいものから読み応えある大作まで、幅広く紹介しています。
「次に読む一冊」を探しているあなたに、きっと心に残る物語が見つかるはずです。
ジャンル別に選ぶ 歴史小説おすすめ20選
① 豊臣秀吉と真田幸村をめぐる戦国小説
豊臣秀吉に迫る物語
《太閤記》(司馬遼太郎)|人たらし・秀吉の出世物語を描いた歴史大作
豊臣秀吉の波乱に満ちた生涯を描く司馬遼太郎の代表作『太閤記』は、歴史小説の王道ともいえる一冊。
農民の子として生まれながら、才覚と人心掌握術で戦国の頂点に登りつめた“人たらし”秀吉の姿が、活き活きと描かれています。関西人には今なお「太閤さん」として親しまれる人物ですが、本作ではその機転・行動力・陽気さの裏にある野心や孤独にも迫ります。
関ヶ原や本能寺の変など大きな事件を背景に、激動の時代を駆け抜けた男の叙事詩として読みごたえ抜群。歴史小説初心者にもおすすめの、まさにロマン溢れる一冊です。

《梟の城》(司馬遼太郎)|忍びが駆ける、秀吉暗殺を巡る伝説のスパイ戦
忍者×城という黄金の組み合わせが炸裂する、司馬遼太郎の初期代表作『梟の城』。
舞台は太閤秀吉の治世。凄腕の忍者・葛籠重蔵が、天下人・秀吉の首を狙って密命を帯びるスリリングな展開に、ページをめくる手が止まりません。対する敵もまた最強の忍者という構図で、忍び同士の静かで鋭い闘いが、時代小説という枠を超えて読む者の中二心をくすぐります。
名台詞「よい面の皮であった」が象徴するように、冷静で美しい筆致の中に熱いドラマが潜む傑作。戦国×忍者の名作を探している方には間違いなくおすすめの一冊です。

真田幸村に迫る物語
《真田三代》(火坂雅志)|弱者が知略で挑む、真田一族の壮大な叙事詩
信州上田を拠点に、戦国の荒波を三代にわたって生き抜いた真田家。その生きざまを濃密に描いた歴史小説が『真田三代』です。
もっとも有名な真田幸村だけでなく、父・昌幸や兄・信之といった一族それぞれの個性と覚悟が、立体的に浮かび上がります。「家を守る」ことを最優先とする真田家の教えは時に冷酷で、身内すら犠牲にする非情さをもはらみながら、ゲリラ戦・奇襲戦術で強者に立ち向かう気迫に満ちています。
知略と精神力、そして絆を武器に戦国を生き抜いた真田一族の姿に、日本人が心揺さぶられる名作です。

《幸村を討て》(今村翔吾)|真田幸村の真実に迫る、多視点で描く戦国エンタメ小説
戦国屈指の人気武将・真田幸村の実像を、徳川家康や織田有楽斎、後藤又兵衛ら複数の視点から描く、スリリングな歴史小説。舞台は大坂の陣、その中でも「真田丸の戦い」に焦点をあて、幸村という人物の姿が少しずつ浮かび上がっていきます。
英雄か、策略家か、それとも…? 立場の異なる語り手が交差する構成が巧みで、読み進めるたびに解釈が変化していくのも本作の醍醐味です。今村翔吾作品の中でも、真田マニア必読の一冊。知っているようで知らなかった幸村像に出会える、読み応え抜群のおすすめ歴史小説です。
本当に雑学ですが、今でも大阪府中央区玉造にある商店街(真田山近く)には六文銭の旗がなびいています。

《今村翔吾と読む 真田風雲記》|真田ファン必読!豪華作家陣による真田愛の短編集
真田幸村を愛してやまない今村翔吾がセレクトした、真田一族にまつわる短編を集めた豪華アンソロジー。
主人公として語られることの多い幸村だけでなく、冷静沈着な兄・信之の恋や、ライバル・後藤又兵衛との静かな敬意、さらには山田風太郎による痛快な忍者フィクションまで、真田家を多角的に楽しめる作品群が揃います。戦国ロマン、兄弟の絆、恋、誇り、そしてフィクションならではの自由な発想が混ざり合い、飽きずに読み進められるのが魅力。
真田ファンはもちろん、歴史小説初心者にもおすすめの一冊です。

戦国武将・軍師・芸能を描いた作品
《光秀の定理》(垣根涼介)|戦国の知将・明智光秀が挑む、確率の決断劇
本作は、後に本能寺の変を起こす明智光秀の若き日を描いた異色の歴史小説。
兵法を学ぶ青年・新九郎や、博打好きの僧侶の愚息らと出会い、交流を続けながら、光秀は「確率」を学んでいきます。信長の命で絶体絶命の局面に立たされた光秀が、ふと思い出すのは、かつて聞いた「四つの椀」の話――現在では確率論で知られるモンティ・ホール問題を応用したその知恵が、歴史小説にどう関わるのか。
知略・人間関係・選択の妙を描いた、ワクワクが止まらないおすすめ歴史小説です。

《八本目の槍》(今村翔吾)|石田三成の知られざる素顔に迫る、熱き短編集
豊臣秀吉の天下取りを支えた「賤ヶ岳の七本槍」。
その武勇で知られる加藤清正ら七人の生きざまを1話ずつ描きながら、物語の中心には“八本目”と称される石田三成の姿が浮かび上がります。知性を武器に政を担い、仲間から疎まれてもなお豊臣の理想を貫こうとする三成の覚悟と孤独が胸を打ちます。
忠義と野心、友情と確執が交錯する戦国群像劇。「関ヶ原の敗者」では終わらせない、最後の最後まで「豊臣」を世に残そうとした男・石田三成の真の魅力に迫る歴史小説として、初心者から戦国ファンまで広くおすすめしたい一冊です。

《塞王の楯》(今村翔吾)|矛と楯、魂がぶつかる職人たちの熱き戦い
直木賞を受賞した今村翔吾の傑作『塞王の楯』は、「守り」と「攻め」の技術と信念がぶつかり合う、まさに魂を揺さぶる歴史小説です。
鉄壁の石垣を築く穴太衆と、破壊力で戦場を制す国友衆――職人同士の誇りと美学が火花を散らす物語。立花宗茂と京極高次という歴史上の名将がそれぞれの陣営を率い、戦国時代の戦いに「職人の哲学」という新たな視点を投げかけます。
戦の最前線に立つ技術者たち。読後には胸が熱くなる、全力でおすすめしたい歴史小説です。私はこの小説を読んで感動し、滋賀県まで旅行しました。
《利休にたずねよ》(山本兼一)|美と死が交差する、静謐で艶やかな歴史小説
千利休の謎めいた最期に迫る、山本兼一の直木賞受賞作『利休にたずねよ』は、静けさの中に激しさを秘めた異色の歴史小説です。
和の美意識に貫かれた世界観と、色気すら感じる筆致で、茶の湯の本質と利休の人生を鮮やかに描き出します。時間軸を巧みに操作しながら進む物語は、師弟関係や政争の裏に潜む“芸術と権力”の駆け引きを浮かび上がらせ、読むほどに余韻が深まります。
美に忠実すぎたがゆえに追い詰められた男の運命が、現代の私たちにも問いを投げかけてくるよう。静かな衝撃を味わえる、おすすめの時代小説です。

② 江戸時代を描いた時代小説
《落としの作平次》(松下隆一)|人情と謎解きが光る、爽快時代小説の短編集
元同心で“落としのプロ”として名を馳せた左平次と、弟子入りを嫌々受け入れた若者・清四郎の凸凹コンビが織りなす、江戸情緒あふれる人情時代小説。
何かと怒鳴られ、突き放されながらも、左平次の裏に秘めた優しさや人間味に少しずつ惹かれていく清四郎の成長物語でもあります。特徴は、左平次が“会話だけ”で犯人を落とすという鮮やかな推理術。短編集ながら1話ごとの読後感が心地よく、スッキリとした気持ちでページを閉じられます。
ミステリー×人情ものが好きな方にぜひおすすめしたい、温かくて粋な時代小説です。

《てらこや青義堂》(今村翔吾)|泣けて燃える、元忍者×師弟の異色時代小説
寺子屋を舞台に、かつての凄腕忍者と個性豊かな子どもたちが織りなす、熱くて泣ける人情時代小説。
主人公は、過去を封じて暮らす元忍者の師匠・伊賀坂入流鳳。やんちゃな教え子たちと心を通わせる一方で、かつての敵である忍びたちとの宿命の対決も待ち受けています。「どいつもこいつも化物か!」と叫びたくなるバトル描写や、くすぐるようなセリフまわしは、今村翔吾作品ならではの熱量。『イクサガミ』ファンなら必ず刺さる世界観と、静かな成長と別れの余韻。
笑って泣ける、今もっともおすすめしたい時代エンタメ小説です。

《一路》(浅田次郎)|参勤交代に命をかける、不屈の旅路と成長の物語
突然の失火により、無謀とも思える日程で参勤交代を強いられた小藩の御殿様と家臣団。
その差配を一手に担うのは、不器用で経験の浅い青年・蒔坂左京。中山道の難所、大雪、差し合い、病――次々と襲いかかる苦難を乗り越えるたびに、一行は少しずつ結束を深め、成長していきます。人はどう変わるのか。組織とは何か。浅田次郎らしい人情と骨太のドラマが詰まった、笑いと涙の“参勤交代ロードムービー”。
読む手が止まらなくなる疾走感と感動があり、歴史小説初心者から読み応え重視の読者まで幅広くおすすめできる傑作です。

《かんじき飛脚》(山本一力)|雪原を駆け抜けろ!心を熱くする疾走時代小説
真冬の金沢から江戸へ――加賀藩の危機を救うため、命がけの任務に挑む飛脚たちの奮闘を描いた、痛快かつ胸を打つ歴史小説。
凍てつく雪道、襲いかかる妨害、避けられない人間関係の葛藤……それでも走り続ける彼らの姿に、読み手の心も熱くなります。スピード感あふれる描写と、人を想う優しさがにじむ筆致は、山本一力ならではの魅力。『あかね空』で知られる著者の、もうひとつの代表作ともいえる本作は、時代小説初心者にも読みやすく、テンポよく楽しめるおすすめの一冊です。
読後中はきっと「走れ!」と叫びたくなります。

《あかね空》(山本一力)|江戸の豆腐屋一家が織りなす、温もりあふれる人情物語
江戸の豆腐職人とその家族の営みを描いた『あかね空』は、人の情けや絆の大切さをじんわりと感じさせてくれる、読みやすくて心温まる時代小説。
腕は立つが不器用な主人公が、職人として、父として、苦難を乗り越えながら成長していく姿に、思わず涙がこぼれます。夫婦のすれ違い、商売の壁――そんな日々の葛藤を、江戸の下町情緒とともに丁寧に綴った物語は、読後に優しい余韻を残します。
派手な事件はなくても、確かに心を動かす一冊。歴史小説というより“人生小説”としてもおすすめです。

③ 幕末・明治を舞台にした歴史小説
《一刀斎夢録》(浅田次郎 著)|新選組の真実に迫る、斎藤一の一代記
「一刀斎」と名乗る老人の語りから浮かび上がる、新選組の知られざる姿――一刀斎、逆から読むと新選組三番隊隊長「斎藤一」。新選組では珍しく明治・大正を生き抜いた左利きの剣豪・斎藤一の回顧録。浅田次郎作品の中でも異彩を放つ傑作です。
近藤勇、土方歳三、沖田総司、そして坂本龍馬や西郷隆盛ら激動の時代の人物たちとの交錯。その栄華と衰退を、斎藤一の視点で振り返る構成はまさに唯一無二。剣の極意は「先手」「手数の多さ」「逃げ足の早さ」と語るくだりには思わず唸ります。
居合い一閃、一瞬にして勝負を決する迫力の描写は、歴史と剣術ファンにはたまらない作品。
戊辰戦争では息子のように可愛がった唯一の愛弟子との決闘、最後の最後まで熱い1冊です。
《燃えよ剣》(司馬遼太郎)|新選組副長・土方歳三の覚悟と美学を描く名作
幕末の動乱を駆け抜けた新選組副長・土方歳三の生涯を描いた、司馬遼太郎の名作『燃えよ剣』。近藤勇の右腕として新選組を支え、“鬼の副長”と恐れられた男が、時代の流れに抗いながら信念を貫いていく姿は圧巻です。
薩長同盟により不利な情勢に追い込まれても、決して諦めず、京都、会津、そして函館へと戦い続けるその姿勢は、まさに男の美学。戦う意味、忠義、誇り――すべてを胸に抱いて散っていく土方の生き様は、多くの読者の心に残り続けます。幕末の熱を感じたい人におすすめの、心震える歴史小説です。

《坂の上の雲》(司馬遼太郎)|明治日本の挑戦と誇りを描く、壮大な歴史叙事詩
明治という時代に、日本がいかにして近代国家として歩み出したのか――その答えが詰まった一冊が『坂の上の雲』です。
主人公は、日露戦争を勝利に導いた秋山好古・真之兄弟と俳人・正岡子規。軍人と文化人、異なる道を歩んだ彼らの姿を通じて、当時の日本の知性、気概、そして理想が描かれます。「天気晴朗なれども波高し」という名文に象徴されるように、国家としての覚悟が随所に滲む筆致は圧巻。
歴史小説でありながら、一国の精神を感じさせる重厚な読み応え。近代史を深く味わいたい方におすすめの長編です。

④ 中世・源平の時代を描く歴史小説
《楠木正成》(北方謙三)|悪党の矜持と戦略が光る、異端の歴史小説
南北朝時代の名将・楠木正成を、英雄でも聖人でもなく、“物流を制する戦略家”として描いた異色の歴史小説。
北方謙三ならではの骨太な筆致で、従来の正成像を覆し、富と力を蓄えていく「悪党」としての生き様に迫ります。華やかな武将ではなく、徹底した現実主義者として、奇策と戦術でメインストリームの敵に挑み続ける姿は、真田幸村とも通じる知略の美学。時代の波に逆らいながらも自らの信念を貫く、ひとりの男のリアルな生き方が胸に響きます。王道から一歩外れた、硬派な歴史小説を探している方におすすめの一冊です。

《義経じゃないほうの源平合戦》(白蔵盈太)|義経の兄・範頼から見た、もうひとつの源平史
源義経の兄でありながら歴史の表舞台では語られることの少ない人物――源範頼を主人公に据えた本作は、源平合戦をまったく新しい視点で描く意欲作です。平家討伐の総大将として担がれた範頼が、兄・頼朝の威光に怯え、弟・義経の天才的な振る舞いに不安と羨望を覚えるなかで、自らの役割と信念を模索していきます。
虎(義経)には虎の、竜(範頼)には竜の役割がある――そんな印象的な一文が象徴するように、本作は“名もなき者の誇り”を丁寧にすくい上げる物語。源平時代を多面的に捉えたい方におすすめの歴史小説です。

最後に
時代は変わっても、人の生き方や信念は変わらない。
歴史小説を通して、今の自分に重なる感情や言葉に出会えることも少なくありません。
ぜひ気になる作品から、あなただけの「お気に入りの歴史小説」を見つけてみてください。
この物語の数々が、あなたの読書時間をより深く、豊かなものにしてくれるはずです。
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